屋根材のひとつに「スレート」があります。岩やセメントなどから作られ、多くのメリットがあるため、とても重宝されています。
ただ、このスレートは昔、強度を補うためにアスベスト(石綿)を混ぜて作られていたことがあります。これは一般的に「石綿スレート」と呼ばれ、古い家屋だと今でも屋根に残っていることがあります。
ご存知のように、アスベストは健康被害の危険性などが懸念され、その使用が全面的に禁止されました。
(参考)アスベスト全面禁止(平成24年政令改正)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000142192.pdf
では、石綿スレートを使った屋根は、使用されていても法的に問題ないのでしょうか。また居住者や近隣の方の健康に悪影響はないのでしょうか。
今回はアスベストが混入したスレート屋根の危険性や、法的な規制内容について見ていきたいと思います。
アスベストの使用は全面的に禁止されている
まず大前提ですが、アスベストを含む建材の製造や使用は、2006年に全面的に禁止されました。これは、労働安全衛生法・第55条で規定されています。
第五十五条 黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。ただし、試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件に該当するときは、この限りでない。
参照:e-Gov「労働安全衛生法」より
そのため、2006年以降に製造された屋根材は、アスベストを含んでいないと考えていただいて大丈夫です。
石綿スレートを使っていても問題ないケース
ただ実は、ご自宅のスレート屋根にアスベストが含まれていても、特に問題はありません。この点は、労働安全衛生法施行令で規定されています。少し長いですが、大切な内容なので全文を引用します。
附則(平成一八年八月二日政令第二五七号)
参照:e-Gov「労働安全衛生法施行令」より。太字は引用者による
第二条 石綿又は石綿をその重量の〇・一パーセントを超えて含有する製剤その他の物(以下この条において「石綿等」という。)のうち、次の各号に掲げる石綿等の区分に応じ、当該各号に定める日前に製造され、又は輸入された物(次項に規定する既存石綿分析用試料等を除く。)であって、この政令の施行の日において現に使用されているもの(労働安全衛生法施行令第六条第二十三号に規定する石綿分析用試料等を除く。以下「既存石綿含有製品等」という。)については、同日以後引き続き使用されている間は、労働安全衛生法(以下「法」という。)第五十五条の規定は、適用しない。
一 アモサイト若しくはクロシドライト又はこれらをその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物 平成七年四月一日
二 石綿(アモサイト及びクロシドライトを除く。以下この号において同じ。)を含有するこの政令による改正前の労働安全衛生法施行令別表第八の二に掲げる製品であって、その含有する石綿の重量が当該製品の重量の一パーセントを超えるもの 平成十六年十月一日
三 前二号に掲げる物以外の石綿等 この政令の施行の日
太字の部分にあるように、各号の定めるタイミングで既に使用されている特定のアスベスト製品については、引き続き使用されている限り先の55条が適用されません。
よって、仮にご自宅の屋根に石綿スレートが使われていても、特に問題はありません。
ちなみに、いまこのタイミングでアスベストが混入したスレートに屋根材を交換すると、これはアスベスト製品の使用にあたるため法律違反です。あくまで「法律で禁止されたとき既に使用されていたアスベスト製品を、そのまま使い続ける」のが、例外的に認められています。
しかし、それでも多くの業者は「石綿スレートは早めに撤去したほうがよい」と言います(弊社も同じ立場です)。これはなぜでしょうか。
石綿スレートもアスベスト飛散の危険性がある
アスベストを使用している製品は、粉じんの発生しやすさなどに応じて、次の3つに分類されます。
・アスベスト含有吹付け材(レベル1)
・アスベスト含有建材(レベル2)
・アスベスト含有建材(レベル3)
それぞれの大まかな特徴を整理してみましょう。
アスベスト含有吹付け材 | アスベスト含有建材 | アスベスト含有建材 | |
レベル | レベル1 | レベル2 | レベル3 |
飛散性 | 飛散性 | 飛散性 | 非飛散性 |
粉じんの発生しやすさ | とても高い | 高い | 比較的低い |
代表的な製品 | 吹付けアスベスト吹付けロックウールなど | 保温材耐火被覆材断熱材など | 化粧スレートサイディングボードなど |
参照:国土交通省「アスベストの飛散性・非飛散性とレベル1~3の整理」より
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/asbestos/2pdf/s1-1.pdf
レベル1に行くほど危険性が高いと思っていただいて問題ありません。
今回のテーマである石綿スレートは化粧スレートの一種なので、レベル3のアスベスト含有建材に該当します。非飛散性=アスベストが飛び散る危険性が極めて低いため、普通の使い方をしている限り、問題はないとされます。
ただ、強風で石綿スレートが落ちて割れたり、日曜大工などで誤ってヒビを入れたりしてしまうと、そこからアスベストが飛散して、居住者や近隣の方の健康に被害を与える恐れがあります。
これが、多くの業者が石綿スレートをすぐ撤去したほうがよいとする理由です。
以上、石綿スレートの基礎についてお伝えしてきました。
石綿スレートは、破損などしない限り、使用し続けていても特に問題はありません。ですが、お伝えした理由から早めに安全な屋根材と交換するのが望ましいです。
スレート屋根は風に弱く、強風や台風によって屋根から剥がれ落ち、割れてしまうリスクが高いです。それによって飛散したアスベストは、ご家族はもちろん、ご近所の方の健康にも被害をもたらす恐れがあります。
ご自宅の屋根材にアスベストが使われている可能性がある方(築年数が古い家にお住まいの方など)は、ぜひ早期の調査・交換をご検討ください。
スレート屋根にアスベストが含まれている場合の対処方法
ここでは、スレート屋根にアスベストが含まれている場合の対処方法についてご紹介いたします。
塗装をする
アスベストを除去する必要がなく、安価でリフォームできます。工事により、アスベストが周りに広がることも抑えやすいです。費用は30坪で、40〜70万円かかると言われています。
さらに、アスベストが含まれたスレート屋根は、衝撃にも強く、壊れにくい特徴があります。塗装をすることで、メンテナンスがわりにも役立つため、今後も長く使える期待がもてるでしょう。しかし、定期的に塗り替える必要があったり、何十年も経つと、屋根そのものの寿命が来たりする点は気をつけましょう。
また、完全にアスベストを除去する方法ではないため、除去するという根本的な悩みには対処していません。塗装する方法は、見方によっては間に合わせとも受け取れます。近々、家を建て替えたり、リフォームしたりする予定がある方におすすめの対処方法です。
葺き替え工事をする
アスベストを適切に除去した後、今の屋根から新しい屋根にリフォームする方法です。アスベストを物理的に除去できるため、工事が終わる頃には、根本的な悩みからも解放されます。
費用は30坪で、160〜260万円かかると言われています。アスベストが含まれた屋根を処分する費用も加算されているので、見積もりも高くなりやすいです。
葺き替え工事は、もともと屋根が破損していて、補修をする予定がある方におすすめです。
カバー工法をする
アスベストが含まれたスレートの屋根に、新しい屋根材を被せるリフォーム方法です。葺き替え工事をするよりも手間が少ないです。
費用は30坪で120〜240万円かかると言われています。カバー工法は、屋根に破損がなく、工期を短縮、費用を抑えたい方におすすめです。
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