アスファルトシングルは、機能性に優れ、価格もそこまで高くないため、コストパフォーマンスの良い屋根材として知られます。
今回は、このアスファルトシングルの特徴や他の屋根材との違い、メンテナンス法などの基礎知識をお伝えしたいと思います。
アスファルトシングルとは
アスファルトシングルは屋根材の一つで、名前のとおりアスファルトを使って作られます。具体的には、ガラス繊維基板にアスファルトを塗り、その上から石粒をコーティングします。高い防水性や防音性など機能的に優れ、費用もそこまで高くない、コストパフォーマンスに優れた屋根材です。
もともとはカナダや北米でよく使われている屋根材ですが、最近は日本でも見かける機会が増えてきました。
それでは、まずメリットとデメリットを見ていきましょう。
アスファルトシングルのメリット
・傷つきにくい(ひび割れにくい)
・錆びにくい
・防水性、防音性に優れる
・軽い(耐震性が犠牲にならない)
・屋根の形を選ばない
・扱いやすい
・カラーバリエーションが豊富
・安い
アスファルトシングルは屋根材ですが、その形状はスレート屋根や瓦屋根と違い、ペラペラなシート状です。施工時はハサミで紙を切るようなイメージで加工・施工します。そのため、とても扱いやすいです。またペラペラなシートのため、屋根の形を選ばずに使えます。
素材がアスファルトのため、耐久性に優れています。また機能的にも、防水性や防音性に優れるなど申し分ありません。また軽い屋根材のため建物の重量がかさまず、耐震性をそこまで犠牲にしないで済むメリットもあります。
ちなみに、アスファルトシングルのメリットで「耐震性が上がる」といわれることがありますが、建物の重量は増えるので、耐震性は必ず犠牲になります(建物の重量と建物を揺らす力は、正比例します)。ほかの屋根材より下げ幅を抑えられるのが、アスファルトシングルの強みです。
(参考)『荷重』- 積載荷重|日本建築構造技術者協会
http://www.jsca.or.jp/vol5/p4_4_tec_terms/200506/20050623.php
そして、こうした豊富なメリットを備えているにも関わらず、値段も安価です。
アスファルトシングルのデメリット
・風に弱い(剥がれる、石粒が舞い散る)
・断熱性がそこまで良くない
・扱える業者が限られる
・ゆるい勾配には不向き
・経年劣化に弱い
大きなデメリットとしては、風に弱い点、そして扱える業者が限られる点です。
強風が吹くと表面に付着した石粒のコーティングが飛散する恐れがあります。また台風などあまりに強い風を受けると、アスファルトシングル自体が剥がれて飛んでいってしまうこともあるので要注意です。
またアスファルトシングルは、最近になって少しずつ見るようになったとはいえ、まだまだ日本では普及していません。そのため、そもそも取り扱っておらず、対応できないという業者も多いです。
アスファルトシングルの耐用年数は10〜20年
アスファルトシングルは、屋根材として十分な耐久性を備えていますが、さすがに瓦屋根やガルバリウム鋼板よりはもちません。耐用年数としては、製品にもよりますが、10〜20年くらいを目安に考えておくとよいでしょう(お住まいの周辺環境などにもよります)。トタン屋根より少し長持ちするくらいのイメージです。
そのため、できれば10年くらいのスパンでメンテナンスを行うのが望ましいです。
修理・メンテナンスの方法としては、以下の3つがあります。
・アスファルトシングルの葺き替え
・カバー工法
・塗装(メンテナンスのみ)
葺き替えとは、屋根のアスファルトシングルを撤去して、新しいものに交換する方法。カバー工法とは、いまある屋根材はそのままに、上から新しいアスファルトシングルを貼り付ける方法です。
両者のメリット・デメリットは、それぞれ次のとおりです。
葺き替え | カバー工法 | |
メリット | ・しっかり修理、メンテナンスできる・建物が重くならない=耐震性がそこまで犠牲にならない | ・葺き替えより安価・工期も短い |
デメリット | ・古い屋根材の撤去作業ぶん費用が高くなる・撤去作業ぶん工期が延びる | ・屋根材が二重になるため、建物が重くなる=揺れに弱くなる・屋根の状態によっては出来ない |
どちらも一長一短ですので、ご予算などと相談の上で選択する形になります。
塗装は、塗料でメンテナンスする方法です。アスファルトシングルは油性塗料を使用できないので、水性塗料で塗り替えることになります。
塗料については、以下の記事に詳しくまとめたので、よろしければ併せてご覧ください。
*塗料とは|株式会社ネオテックス
https://neotex.jp/paintingmt/
アスファルトシングルとスレート屋根の比較
屋根材として最も一般的なのは、スレートと呼ばれるものです。
そのため、アスファルトシングルへの葺き替えを検討される方の多くは、スレートと比較検討する形になると思います。
そこで、スレートとアスファルトシングルの違いを簡単にまとめてみましょう。
アスファルトシングル | スレート | |
素材 | アスファルト | 天然スレート:天然の岩化粧スレート:セメント |
耐用年数 | 10〜20年 | 10〜20年 |
重さ | とても軽い | 軽い |
割れやすさ | 割れにくい | 割れやすい |
耐火性 | 優れる | 優れる |
防水性 | 優れる | そうでもない |
防音性 | 優れる | そうでもない |
耐腐性(錆びにくさ) | 優れる | 優れる |
カラー | 豊富 | 豊富 |
施工可能業者 | とても少ない | どこの業者でも対応可能 |
修理法メンテナンス法 | 葺き替え・カバー工法・塗装 | 葺き替え・カバー工法・塗装 |
値段 | 安価 | 安価 |
ご覧のように機能的にはアスファルトシングルのほうが上です。値段はどちらも安いですが、スレートのほうが少しだけ安価です。
なぜアスファルトシングルは日本で普及しないのか
こうして見ますと、かなり便利な屋根材と思えるアスファルトシングルですが、先にもお伝えしたように、日本ではほとんど普及していません。一方、カナダや北米では、屋根材といえばアスファルトシングルといえるくらい人気です。
普及しない理由には諸説ありますが、最もよくいわれるのが、台風です。日本は台風大国のため、風に弱いアスファルトシングルは向かないから普及しないとされます。実際、検索エンジンで「アスファルトシングル 台風」と検索いただくと、台風でアスファルトシングルが剥がれてしまったという声がたくさん出てきます。
以上、アスファルトシングルの基礎知識でした。日本ではまだ知名度が低いですが、コストパフォーマンスに優れている優秀な屋根材です。今後は少しずつ普及が進むかもしれません。
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